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真っ青な空に白い雲が広がりどこからか鳥の鳴き声が聞こえる。 私たちがイメージする香港とはかけ離れた自然に包まれた香港が舞台。 そんなのどかな土地に家族と住むコニー(梁雍婷:レイチェル・リョン)が 両親を殺害するという事件が発生する。 重くどんよりとした後味の悪さに胸が痛む。 自らの罪をまるで隠すことなくむしろ積極的に認めるコニーの姿に 彼女が生きながらえていくにはそうするより他に選択肢がなかったのだと 思うとやりきれない。 暴力的で娘の同級生を金で家へ連れ込みそれを隠そうともしない人間以下の 父親とそんな父親の支配下にあり娘を守ることを放棄し声を発することすら 封印してしまった母親。 娘の唯一のよりどころとなるはずの兄すらも仕事を理由に家族との接触から 逃避している。 両親を自らの手で抹殺してしまう以外に自分の人生を手にする方法があると 教えてくれる大人がいなかったことが悲しい。 それと同時に殺人を手伝ってしまうコニーの同級生の友人、エリック (顧定軒:ジーノ・グー)の存在もまた心に残る。 彼は同性愛者であり、それを周囲にからかわれることを恐れている。 だからコニーの存在は友人であると同時に隠れ蓑でもあるのだ。 しかし2人の関係は親友のように見えつつも実際のところエリックは コニーに支配されている。 彼女に見放さることを恐れコニーの両親殺害を手伝ってしまうエリック。 彼女に従っていればいつでも良い方向に向かう。 そう思っているエリックが殺人後この後どうするかをコニーに問う。 彼にとって友人の両親の殺人は人生の途中経過にすぎないのに コニーにとってはこれこそが人生の目的になっていたのではないか。 そんな抜け殻のようなコニーから次の指示は何もない。 そこで初めてエリックは自分の犯した罪の恐ろしさを思い知ってしまうのだ。 物語はコニーを取り調べる女性刑事アンジェラ(鄧麗欣:ステフィー・タン)の 生活も同時進行で描かれている。 新たに授かった子供がお腹の中にいる彼女は夫、そして認知症を患う実父と 暮らしている。 アンジェラの父親への冷たい態度を見ていれば今は子供に戻ってしまった 父親が今まで家族にとって良い父親、夫ではなかったのだろうと推測できる。 父親に手をかけなかったアンジェラと手をかけてしまったコニー。 その2人の人生は大きく違ってしまったが、実際に手にかけなくとも 心の中ではおそらく父親の存在を殺してしまったであろうアンジェラと コニーの間に一体どれほどの違いがあるのだろうか。 登場人物それぞれのこれからたどる道が気にかかる。 コニーもエリックも、そしてアンジェラも青い空と白い雲を見上げて 心穏やかに微笑む日が来ると、いい。 2017年 香港映画<「大阪アジアン映画祭2018」にて鑑賞>
by sabunorihk
| 2018-07-16 09:24
| 香港映画 た行
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